かつらの種類



B社では,自毛の量に応じてかつらの構造を選べる。
私が契約したのは,確かインテグレーションという商品名がついていた。

これは,フロントだけピンで留め,周辺は接着剤で留める。
かつらはネットで出来ていて,網目から自毛を引き出す,というものである。

つまり,横と後ろは,自毛と,かつらの縁のタコ糸みたいな部分を,瞬間接着剤でくっつけるのである。
前だけはパチンとワンタッチで自毛を挟むピンみたいなやつがついており,これは自分で外したり付けたりできる。

かつらのシャンプーする時は,前の金具を外して,そこから指を入れて洗うのである。
ただし横と後ろは接着されているわけだから,着脱はサロンでしかできない。サロンでは,髪を切って外し,溶剤みたいなにおいのする薬品で,こびりついた接着剤を取る。
散髪が終わると,また瞬間接着剤で留めるのである。

この方法は,店で勧められて選んだのだが,具合が悪かった。
横と後ろは,一束(数十本)の髪を引っ張り,それをかつらの縁に接着する。これを横と後ろの4箇所で行う。
かつらにかかる力は,わずか4点に集中するのだ。
普段,起きている時は問題ないのだが,夜,寝るときに頭を動かすと,ひたすら痛い。
枕と頭に挟まれ,かつらが動くたびに,4箇所の髪が強く引っ張られるのだ。
1週間もしないうちに,接着した4束の髪の根本が盛り上がってきた。
内出血しているのだ。

逆に,1ヶ月も経つと,髪が伸びるのでゆるゆるになる。
不安で不安でしょうがない。一度,店員に相談したら,
「心配なら,サロンに来てもらえれば付け直ししますよ」
と言われた。
しかし,月に何回も足を運ぶ時間はなく,無理な話だ。
この状態で,半年ほど我慢したが,痛みと不安に耐えかね,全部金具に交換することにした。
つまり,前だけでなく,横も後ろもワンタッチで付け外しができるピンを付けてもらったのである。

ピンにしたら,痛みはずいぶんマシになった。
何よりうれしいのは,シャンプー時には外せること。
頭皮を直に洗えるのは気持ちがいい。
また,髪が伸びても,ピンで留めるのだから問題はない。

しかし,ピンは,毛を挟んでいるだけで,接着剤ほどきっちり付けているわけではない。
つまり,外れる,という恐怖はいつもあるわけである。
私は幸い,1度も人前で外れたことはない。
しかし,一歩間違えば,というのは何度もあった。
これはまた別の機会に書こうと思う。


ピンは,外れやすいという問題の他に,もう一つ大きな問題があった。
接着剤で留めるときは,かつらの縁ならどこでも留められるから,毎回違う場所を接着していた。
そのため,毛を引っ張りすぎて内出血しても1ヶ月後には,その部分の皮膚は開放され,回復するのである。

ところが,ピンの場合,いつも同じ場所である。
ピンは糸でかつらの縁に縫いつけてあるから動かせない。
接着剤ほどではないが,ピンだって髪を引っ張ることは同じだ。
すると,その部分の毛が薄くなってくるのである。
これは直ぐにはわからない。自分の場合,1年くらいたって,始めて気付いた。

しかし,接着剤で付けた時の痛みを思い出すと,元に戻す気にはなれなかった。